引っ越し随筆

2025-12-06 - 読み終える時間: 12 分 🌐 中文版

原作(2023年)は中国語。和訳:ChatGPT

数日前、母からかなりの額のお金が送られてきた。母方の祖母からで、「ご喬遷(きょうせん)喜び申し上げる」とのことだった。


乔迁】qiáoqiān 動詞 文語・書面語

よい場所へ転居したり昇進したりする。

・恭贺 gōnghè 乔迁之喜
 ご昇進のお祝いを申し上げます。

『詩経』小雅・伐木の言葉。「幽谷より出て、喬木に遷る」から。

「超級クラウン中日辞典」より

乔迁 qiáoqiān verb

move to a better place or get a promotion:

乔迁新居 move to a new home

「オクスフォード英中中英辞典」より

今回ふと思い立って調べてみなければ、私はずっと「喬遷」は単に他人の転居を丁寧に言うための語だとばかり思っていた。調べてみて初めて、この言葉がこんなにもはっきりとしたポジティブな意味を持つことを知った。「よい場所へ転居」! 私の見識不足だったわけだが、実際のところ、今回は確かに以前に比べて遥かに良い環境へ移ったのだから、祖母がこの言葉を使ったのも間違ってはいない。荒唐無稽なルームメイト、騒がしさの絶えない中高学校の校庭、煌びやかだが生活感の欠片もない高層ビル群――そういったものから離れ、私は静かでゆったりした住宅街へやって来て、一人暮らし向けの小さなスイートルームに入居した。ここは木々に覆われ、生活に必要なすべてが徒歩圏内に収まり、朝8時頃に外へ出ると人間密度と犬の密度がほぼ1対1だ。家賃も150ドル上がったのだから、そりゃ良い場所に移ったと言えるだろう! そしてこの静かな新居は、世界最強の国家の首都の中心から、せいぜい4~5マイル(約7~8キロ)しか離れていない。それを思うと、世界の奇妙さをしみじみ感じられた。北京の中南海[1]周辺8キロ圏内にも外国人はそれなりに住んでいるだろうが、彼らが中心から外周まで歩いたとしても、やはりぎっしり並んだ都市景観ばかり目に入るのではないだろうか? 思い返せば私が初めてアメリカ大陸の土地に足を踏み入れた日、空港バスに乗っていたときに、前に座る他の人の出迎えに来たお姉さんが連れて来た相手にワシントンを紹介していて、開口一番「Washington is more like Washing Town」(「ワシントンなんか、むしろワシン村って呼んだ方がいいわよ」)と言っていた。さすが地元民、誠に我を欺かざりけり!

漢文化の伝統では、引っ越しは非常に重大な出来事として扱われるものらしい。爆竹を鳴らし、飾り付けをし、客まで招いて盛大に祝う。そうでもなければ、あれほど多種多様なお祝いの儀礼や、「喬遷之喜」といった決まり文句も存在しなかっただろう。我が家が南京の高淳区[2]に引っ越したとき、現地の風習では、二本の菓子を買い、その中に1000人民元(約2万円)の現金を挟んでビニール袋に入れ、「喬遷」した家の主人に贈る。そして主人は別の機会に別の形でそのお金を返す……とかなんとかで、私は今でもよく分からない。これをアメリカでやったら大変なことになる! 数日置きに引っ越す勢いなのだから、一体どれぐらいの菓子を受け取ることになろうか! でも逆にいうと、アメリカ人の日常の食生活はもともと単調で、しかも甘い物が大好きなのだから、いっそその「喬遷」祝いの菓子を主食にしてしまえば、ちょっと面白いじゃないか。ただ、大西洋の向こうのアイルランドに、「添加糖12%超のパンは『パン』と認めない」と言い放ったあの裁判所がこれを聞いて、怒って脳梗塞でも起こしたら大変だ。

アメリカ人の引っ越し好き、というのは私にとってずっと都市伝説めいた話だった。いろいろなメディアで、企業が都市間(さらには国をも跨いで)社員を異動させるとか、本人がそんな異動を申し出るとか、ニュース媒体や学術機関が「年に少なくとも一度引っ越す人々」とそれ以外の人々を比較した研究をしているのは目にしてきた。しかし、アメリカに来て一年、私自身は実際に「社会人が引っ越し大好き」な姿を見たことはなかった(何しろ交流範囲が学生中心だ)。ただ、私の夏休み期間のルームメイトたち(「荒唐無稽」だったのは彼らではない)の生活ぶりを見ることで、多少それは垣間見えた。私の夏季ルームメイト3人は6月初めに入居し、8月初めには荷物をまとめて去って行って、滞在わずか2ヶ月。そのうち2人はインターンあるいは研修で来ていたから分かるとして、残りの1人は私と同じく毎日部屋でパソコンを見ていたが、何をしに来たのかは分からない。リモートワーク? なら元いた場所でやればいいのに? 他人の私生活を詮索する気はないが、彼らの入居・退去の手際は、言うなら「慣れきっていて、長江の流れのようにスムーズだ」というほかなかった。2人(親なし)が車一台でやってきて、1人が入居、もう1人が手伝う。荷物は数個のキャリーケースにまとめてあり、一度で全部階下から部屋へと運び入れる。物を置いたら、リュックを背負ってスーパーへ。鍋釜に野菜果物、パンにチーズ、シャンプーにスキンケア用品まで、なんでもかんでも1往復でリュックに詰めるそのアメリカ式大買い出しの豪快さよ。最後に手伝いに来た女性と抱き合ってキスし、名残惜しみつつ彼女が車で去っていくまで、始めから終わりまで、たったの2時間の出来事だった。退去も同じ。持っていく物は二つのキャリーケースに詰め、カートを借りて階下へ運び、車に積んで走り去る――まるで雲ひとつ残さず、不要な物品だけたくさん残して、清掃費を請求されようが何しようが、どこ吹く風という風情だった。

私はまるで違う。(アメリカ人に比べればだいぶ)苦しい生活に慣れてしまった私は、使える物を何であれ捨てたくない(もちろん輸送費と買い替え費を計算して取捨選択はする)。だから荷造りは複雑になる。車もないから運搬も複雑になる。挙げ句、地元に友人がいない(友人は学生ばかりで、夏休みにどこへ行ったか分かったものじゃない)。全部自力で何とかするしかなかった。本当は車を借りる手もあったが、ワシントン市内は運転しにくいし、外国人の私が臨時免許で行けば、レンタカー会社から冷たい目を向けられそうだし、結局、ライドシェアと公共交通が大活躍することになった。今回は重い物のほとんどがスーツケースだったのがせめてもの救いで、幸運にも上海から逃げたときのように腰を痛めずに済んだ。今は基本的に落ち着き、必要な家具は買い、周辺も歩き回って土地勘をつけて、運転免許もDCからバージニア州のものに切り替えた。ちょうど学期も始まり、またいつ引っ越しの苦行を連れてきてくれるか分からないまま、時は自然に流れていく。

引っ越しというものを、私は実際かなり経験してきた。中学時代、山の上から山の下へは荷車で移動し、高校卒業のときは家の車で南京の大学の寮まで運ばれた。大学時代に一家で南京高淳へ移ったときには、両親が小さなトラックを一台手配し、そのアクセルを踏み切っても時速まで90しか出ない車で一家の財産を運んだ。これらはみな家族と一緒の引っ越しだ。だが、私一人でやった引っ越しとなると、実に不可解なものが多い。大学2年の始まりに新キャンパスから旧キャンパスへ、3年の夏には江蘇省北部の病院で一ヶ月の見習い、4年末には実習先の病院の寮へ、5年の実習[3]が終わればまた大学へ戻る。極めつけは6年終了後の夏だ。コロナ禍のせいで皆が半年間キャンパスに戻れていなかったところで、突然「寮を改装するから荷物を全部出せ」と通達が来た。私はこの機に乗じて、車を走らせて荷物をすべて家に持ち帰った。これで私は6年間で5回。一方、同級生たちは、その後さらに仮置き場から別の寮へ荷物を移し、六年間六回の「六六大順」[6]を達成した。彼らの新しい寮の皮肉話や、コロナ期間の医大の人間劇になると、それは三日三晩でも語り尽くせないから、機会があればまた話そう。こうして考えると、私の引っ越し経験のうち、回数だけ見れば自力が大半を占めている。これもすべて、東南大学医学部の英明なる学院長方、学生思いの校則制定、優れた高度なキャンパス管理、そして厳密で科学的な学問態度と防疫態度の賜物である。

東南大学医学部タヒね。……はい、認めます。私はだらだらだらだらと長く語り続けてきたが、結局言いたかったのはこれだけだった。

二〇二三年八月二十三日 作
令和七年十二月六日 訳


[1] 中南海:中国共産党最高指導者らの官邸。3連続の湖「北海・中海・南海」の南側2つが敷地内にあることから名付けられた。

[2] 高淳区:南京市中心部より南、約100キロ離れた小さな町。水産(カニ)養殖と観光業が盛んで、南京から市営地下鉄で1時間半ほどで行ける。

[3] 中国の医科大学学部生は5年課程で、うち5年目はまる1年間、総合病院の全ての診療科で臨床実習をする。筆者は修士直進課程だったため学部卒業後、そのまま6年目(修士1年目)に直進した。

[6] 六六大順:中国では6は縁起の良い数字とされ、「六六大順」はこれから何事も順調に進む、という祝福の意味合いが込められた決まり文句。

Tianjian.Hu

Record of my genius ideas and mental disorders.
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